初期ミルクール・タイプ製作工程 これから作り始める初期ミルクール・タイプとモダン・タイプの表板、裏板、横板。 これはミルクール・タイプの裏板で、材質はメープル。 四方にふくらみを付けた状態で接ぎ付けたもの。 補強材を接着 ミルクール・タイプの側板 響板を接着 ミルクール・タイプのボディが完成(写真手前)。 この段階で、すでにこの楽器は出来上がったも同然なのです。 補強材の材質と位置、それらとボディの深さのバランスをどのように纏めるか、ずいぶん悩みましたが、ほぼ狙いどうりの反応を得ることができました。 ちょうどこの頃、フランスの博物館に所蔵されていたプティジャンを修理する機会を得て、その楽器はネックが付け根から外れていたのです。これはたいへん参考になった。もちろん纏め方はかなり違う方向だが、足がかりがあると大いに助かる。そういう幸運にも、今回恵まれているのです これらはネックとヘッド材。ネックはリンデン(菩提樹)、ヘッドはメープルとエボニー。 ミルクール製のギターには、ヘッド材としてはブナの木がよく使われていますが、今回は軽めのメープルを使います。19世紀ギターのネック材としては、この他にシナノキ、ホウノキ、など軽めの広葉樹、他にマホガニーやセドルでも極軽いものならば使うことはできます。オリジナルではスプルースを使っているものを見たことがありますが、この材質も軽いものでした。 ヘッドを切り出す。 これの両面に黒檀の板を貼り付ける。 このように、まずヘッドの厚みを仕上げておき、Vジョイントも接着できる状態にしておいてからネックの仕上げにかかる。この写真の状態は、ヘッドは仮に繋いでいるだけでまだ接着はしていない。ネックには黒檀のベニヤを巻きつけるので、その分の厚みを差し引いた厚みまでキッチリと仕上げる。 ボディとつながるヒール部分はネックに黒檀を巻いた後、接着する状態にまで仕上げてからそれに合わせて、これも黒檀の分を差し引いた状態で仕上げ、その後ヒール部に黒檀を巻きつける。つまり、ネックとヒール部はベニヤを巻く前の接着部の形状が異なるため、同時に黒檀を巻くことができない。そのため、1工程ずつ行うことになる。 これまで見てきたミルクール製のオリジナルは、ネックとヒール部は一本の木で作られているが、ボディとの接着面が木口になってしまうので、強度が心配であるし、何よりもニカワの効きが悪いので、私はL字形に接着している。 ネックに黒檀のベニヤを貼り付けたところ。 ヘッドを接着。 この後ヒール部との接着箇所となるところからカットする。 カットしたネックとそれに接合されるヒール部。 YouTube動画参照(ネックをカットする) Heel部の下地仕上げ このように原寸図を描いて行うと間違いがない。 ベニヤの貼り方はよく問い合わせがあるので、今回、公開しておきます。 まずベニヤを貼る部分にニカワを塗り、しばらく乾かしてから。 このようにアイロンで焼き付ける。このとき、ベニヤは沸騰させた水でしばらく煮ておく。これはイギリスの家具製作の伝統的な技法です。 YouTube動画参照下さい。 この後ネックと接合する 接着面がきっちりと合っていて、うまくニカワ付けが行われていれば 強度は十分にあるが、念のため写真のように補強材を入れておく 雇核 Yatoizane。 ネックの出来上がり ネックを接着。 ネックはボディに5mmほど埋め込んでいるだけで、ホゾ組みはしていない。 19世紀初頭のミルクール製のギターは、ネックの接着はボディに直にベタ貼りされているものが多く、このように少し埋め込んだものは比較的少ない。その後1830年代以降は埋め込んでいるものが多くなる。 ブリッジのムスタッシュを切り出す。 材質はコクタンで、コクタンは切るときに割れやすいので、0.5mmのベニヤを、木繊維が直角に交わるように2枚貼り合わせ、これをカットする。 私はこういったものの下書きは適当にフリーハンドで描き、糸ノコで切りながら修正していく。反対側のものはこれを反転して、ケガキ針であたりを付け、それを元に白エンピツ、または細い白ボールペンで下書きする。 切り抜いたものをニカワで焼付ける。 ネックのベニヤ貼りと同じやり方。 ついでに12フレット以降のコクタンのフレットも接着しておく。 木地の出来上がり この後ニス塗りを行う 撮影のため楽器のバックに使った布は フランスのリヨンで織られたもので古いものらしい この後の工程はラプレヴォット製作工程と 同じですのでそちらをご覧下さい 完成 新作ミルクール・タイプ ラコート・タイプ製作工程 ラプレヴォット・タイプ製作工程 パノルモ・タイプ製作工程 Back Home |